鬼から娘を隠したよもぎとしょうぶ
どんな伝承か
ある夜、娘が戸外で桶風呂に入っていると、突然鬼が来て、桶ごとかついで娘をさらい、山へ入りこんでしまった。娘は泣き叫んだが誰も助けに現れない。やがて大きな木から枝が垂れ下がっているところに来たので、その枝につかまって風呂桶から抜け出し、急いで家の方へ走った。後ろから鬼が大声をあげて追ってくる気配がするので、娘はかたわらのすっき・よもぎ・しょうぶの茂る藪の中に隠れた。鬼は地震のような音を立てて走って来て、鼻を動かし人間の臭いをかいで探したが、よもぎやしょうぶの臭いに消されて、娘は逃げることができた。五月の節句に屋根へすっき・よもぎ・しょうぶを挿すのは、ここから始まったといわれている。
原典より
ある夜、娘が戸外で桶風呂には入っていた。—— 韮崎市の民話伝説(韮崎市教育委員会・1967年(昭和42年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
韮崎市の民話伝説(韮崎市教育委員会・1967年(昭和42年))
『韮崎市の民話伝説』は、韮崎市教育委員会が昭和四十二年に発行した民話・伝説集である。韮崎・円野・中田・穴山・藤井・神山・穂坂・清哲・旭・大草・竜岡の十一町で民俗資料調査員が集めた百六十八話を収め、武田信玄・勝頼や鎮西八郎為朝、弘法大師の話、山の神のたたりや化かされた話などに話者名や『裏見寒話』などの出典を添える。巻頭に昔話と伝説の解説を置き、本文を木・石・水・塚・坂峠・山・谷沢・屋敷跡城址・祠堂・その他の十部に分ける。