暗闇で七十五度捧げる野口仮屋
どんな伝承か
府中市宮町の大国魂神社では、五月三日から六日にかけて祭礼が営まれる。五日の夜の野口仮屋の祭儀には、こんな由来が伝わる。昔、大己貴尊が源右衛門の家に一夜の宿を求めたが、その朝に妻が子を産んだばかりで穢れているとして断られた。尊が産の穢れは厭わないと告げると、源右衛門は物置小屋へ迎えて手厚くもてなしたという。祭儀は亥の刻、まったくの闇の中で御輿が旅所へ渡ることに始まる。神職を六所明神の代理として仮屋に座らせ、御膳を上げますという口上を七十五度くり返し、七十五度目にようやく提灯へ火が入る。その間、源右衛門の妻役は夜具にもたれ、産婦をまねて二時間ほど動かずにこもるのがならわしだという。
原典より
府中市宮町の大国魂神社の祭礼は、五月三日から六日までおこなわれる。—— 武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
武蔵の伝説(大島建彦/渡辺千佳子・日本の伝説・1976年(昭和51年))
『武蔵の伝説』は、大島建彦と渡辺千佳子が昭和五十一年に著した伝説集である。埼玉県・東京都と神奈川県の一部にあたる旧武蔵国の伝説を、地誌・紀行・社寺縁起・区市史や『埼玉県伝説集成』などの文献と土地の口碑から集め、項目ごとに出典を添える。『日本伝説名彙』の六部門に家・村と祭礼・行事を加えた八部に分け、巻頭の「はじめに」で伝説の分類の方法を論じている。