風呂を好んだ亡母の三度の来訪
どんな伝承か
昭和五十七年の夏、府中市に住む知人の話という。母を亡くして四十九日の法要を営んだ夜、着物姿の母が玄関に立った。驚いて夫や友人を呼ぶと、亡霊は玄関脇の風呂場へ入って消えた。墓石を彫る友人が死の様子を尋ねるので話すと、母は癌を患い、好きだった入浴も食事も病院で制限され、それを苦にしていたことが思い当たった。必ずまた来るから湯を沸かし膳を整えて待てという友人の勧めに従い、十二時十分前に現れる母を迎えた。母は同じ姿で三度現れ、法要を済ませてからは出なくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。