産を嫌う刈倉峠の天狗
どんな伝承か
奥多摩町の峠に、天狗を祀り込んだという場所がある。峠は刈倉と呼ばれ、そこの神はたいそう霊験があらたかで、出産のあった家の者と同席して食事をすることをひどく嫌ったという。産があると必ず何かしるしが現れ、一週間は近づかなかった。あるとき、向かいの谷から凄まじい剣幕で風が吹き寄せ、谷ひとつを押し流すような勢いに追われて、語り手は逃げ帰るのがやっとだったという。もう五十年も前になる出来事である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。