もみあわせの石に並んだ白い手袋
どんな伝承か
奥多摩町に生まれ育った釣り人は、出勤前後の短い釣行を日課にしていた。その日は多摩川と日原川の合流点より上流、釣り人が「もみあわせ」と呼ぶ場所に入る。誰かが毎日のように竿を出す人気の区間なのに、その日に限って良型のヤマメが次々に掛かった。数日は誰も入っていないらしいと気づいて薄気味悪くなった頃、大石の上に外科手術用の薄い手袋が二人分、揃えたように置かれているのを見つける。集落へ戻る途中に会った老女は、女の子が自殺してからここには誰も入っていないと言った。手袋は検死のものらしかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談 ベスト(つり人社)
『水辺の怪談 ベスト』は、釣り人たちが海や川で出会った怪異の体験談を集めた本である。お盆の夜釣りでの金縛り、伊豆大島の釣り宿の離れ、渓流の滝壺や湖のボート、バス釣りの遠征先の宿などを舞台に、釣具店主・会社員・釣りライター・バスプロら十七人が自身の体験を一人称でつづる。「海の章」五編と「川・湖の章」十二編の二部に分け、各編の冒頭に筆者の在住地と釣り歴を記した短い紹介を置き、四人は仮名で書く。