真昼の奥多摩の街道を歩く男の影
どんな伝承か
昭和五十九年十一月、午後二時頃のこと。語り手が妻と奥多摩の街道を歩いていると、妻が何かを感じて振り返った。すぐ後ろを、暗い影のある若い男が歩いている。しばらく進んでも追い越してこないので、もう一度振り返ると、男の姿はなかった。ぞっとしたが、話せば笑われると思って黙っていた。帰宅してからそのことを口にすると、聞いていた息子が、見たのか、と言った。あの場所は自動車事故も自殺も多く、若い娘を見た者もいるという。真昼の怪談である。
原典より
自分の所から二十里ほどの後藤野の話。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。