奥多摩湖の南岸を歩いていた女
どんな伝承か
雨と霧に包まれた夜明けの奥多摩湖の南岸を、釣り人が次の場所を目指して歩いていた。三キロほど進んだ先から、ワンピースにパンプスという山中に不似合いな装いの、髪が肩より長い細身の女が歩いてくる。声をかけると、小さな声でもう帰ると答えたという。三年後、同じ湖で水死体の第一発見者に居合わせた際、居合わせた警察官にその話をすると、警官は髪の長さや年格好まで言い当てたうえで、その女は自殺未遂を繰り返した末に七、八年前に亡くなっていると告げた。数が合わないと訴える釣り人に、警官は会ってしまったのだと言った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
水辺の怪談2(水辺の怪談シリーズ)
『水辺の怪談2』は、釣り人たちが釣り場や釣り宿で出会った怪異を、本人の筆で綴った体験記を集めた本である。伊豆半島や南紀の磯、黒部峡谷、芦ノ湖、中禅寺湖、北海道の渓流などを舞台に、金縛り、女の霊、謎の足音、自殺のあった場所の怪などを、釣りの様子とともに語る。「海の章」と「川・湖の章」に分かれ、各編の冒頭に筆者の住まいや職業、得意な釣りを記した紹介を置く。