枕元で居場所を告げた変死の母
どんな伝承か
江東区南砂町に住むノリ採取業の男が、警視庁鑑識課を訪ねて「私の母が死んでいるらしい、捜してほしい」と訴えた。一月末に老母が家を出たきり帰らず、数か月後、寝ている彼の枕もとに母の霊が立ち、髪を真直ぐ上に立てた姿で「私はいま新田というところにいる」と告げたという。鑑識課員が身元不明変死者の帳簿を繰ると、髪を立てた老女の水死体の写真があり、発見場所は江戸川区新田二丁目先の海上と記されていた。写真はまさしく彼の母の姿だった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。