切れた橋の先から来た足音
どんな伝承か
新葛西橋ができる前、荒川に旧葛西橋が架かっていたころの話である。望月という女性は、噛み癖のある飼い犬を、人のいない深夜に橋の上で散歩させていた。その夜は霧が濃く月も星もなく、先がまるで見えない。犬の綱を引いてゆっくり歩いていると、前方からぴたぴたと足音が近づき、犬が唸って身構えた。すれ違う位置まで来たので道を譲ろうとしたが、そこには誰もおらず、足音だけがすれ違っていった。怖くなって引き返したが、後で聞くと、橋は引き返した地点で切れていて、その先は無かった。一歩でも進めば川へ落ちていたはずだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けについてのマジメな話(平野威馬雄・1974年(昭和49年))
『お化けについてのマジメな話』は、平野威馬雄が昭和四十九年に著した幽霊とお化けをめぐる随筆である。自ら主宰する「お化けを守る会」に寄せられた体験談や、大阪の毎日放送のラジオ番組で聴取者が電話で語った話を軸に、前世や霊媒・降霊実験など海外の心霊研究、井上円了の妖怪論、古い記録に見える犬神などの憑きものを取りあげる。体験談から死後の世界、お化けを呼ぶ方法、昔のお化けへと進む八章立てで、巻末にあとがきを置く。