深谷宿の遊女を偲ぶみかえりの松
どんな伝承か
深谷市深谷はかつて遊廓のある宿場として知られていた。旅人は遊女と過ごした一夜の名残を惜しみ、旅立つとき必ずこの松のところで足を止め、前方に続く鬱蒼とした並木道を眺めては、いよいよ深谷の宿とも別れかと後ろを振り返ったので、みかえりの松と呼ばれるようになったという。久下の長い土手や深谷の並木を歌い、深谷を出ると後ろで呼ぶような声がすると詠んだ古い民謡も残る。昭和三十一年十月には新国道と中山道の交わる地点に記念碑が建てられたが、編者はこの由来を遊廓の宿ゆえの付会とみている。
原典より
深谷は昔は、遊廓の宿場として有名だった。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。