閻魔大王が授けた久昌寺のお手判
どんな伝承か
秩父市久那の久昌寺はお手判寺とも呼ばれる秩父札所二十番の寺で、閻魔大王のお手判という寺宝を蔵し、巡礼者にその墨刷りを配っている。寺名もこれに由来する。『新編武蔵風土記稿』によれば、書写山の開山性空上人をはじめ十三人の権者が秩父を巡礼したとき、地蔵の化身である性空は衆生を憐れんで冥土へ赴き、閻魔王宮で法華経十万部を読誦して供養した。その功徳で罪人が地獄の責め苦を逃れて成仏したので、大王は礼として石の手判と石の証文を授けた。証文石は摂津の中山寺に納め、手判は秩父札所を開く際にこの谷へ二十五の菩薩が来迎したことから、後世の証拠として当山に納め置いたと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。