百日の禁鈴と喜多院の二匹の龍
どんな伝承か
喜多院の七不思議の一つ「山内禁鈴」にまつわる話。ある真夜中、美しい女が和尚を訪ね、寺の鐘を百日間つかないでほしい、そうすれば鐘の鳴りをよくしてあげると頼んだ。和尚が承知して後をつけると、女は寺の南隅の深い濠のほとりで消えた。九十九日目の夕方、別の美しい女が現れ、今度は一度だけ鐘をついてほしいと願う。断りきれず小坊主に鐘をつかせると、女はたちまち龍と化して天に昇り、以後の鐘は「ゴン」としか鳴らなくなった。烈風と雷雨が山内を荒らし、和尚は独楽のように九十九度転がった。前の女は南の濠の主で鐘ぎらいの龍、後の女は鐘の好きな龍だったのだろうと和尚は語ったという。
原典より
喜多院の七不思議の一つに山内禁鈴がある。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。