麦のノゲを焚く朝と岩殿山の蛇
どんな伝承か
川越市岸町には、七月一日の朝早くに麦のノゲを焚く習わしが伝わる。その起こりは、岩殿山に悪い蛇が棲みついて畑を荒らしに来たので、この辺りの百姓も退治に加わることになった昔にさかのぼるという。出立の朝、家々では松明の代わりに門口でノゲをくすべた。その煙を浴びておけば、蛇の毒気に当てられても命を落とさずにすむと信じられていたからである。蛇は首尾よく討たれ、その日を忘れまいとして、月おくれの七月一日になると朝のうちにノゲを焚き続けてきたと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。