朝茶を飲まぬ者を狙う岩殿山の大蛇
どんな伝承か
旧六月一日の早朝、尻焙り観音堂と唱えながら、常口でスクモを焚いて尻をあぶる風習があった。昔、岩殿山に大蛇がいて近くの住民に害を与え、とりわけ朝茶を飲まずに出かけた者が狙われたという。東夷征伐でこの地を通った坂上田村麻呂将軍は退治を試みたが、蛇はなかなか姿を見せない。将軍が岩殿観音に祈ると、翌六月一日の朝に大雪が降り、蛇は動けなくなって首尾よく討たれた。スクモを焚くのは、感謝した人々が将軍や将士を暖めたのが始まりだという。この朝には小麦饅頭を作り、食べれば病にかからないとされた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。