十郎渕に沈んだ金子十郎と蕎麦の禁忌
どんな伝承か
鳩山村石坂の十郎渕は丸渕ともいい、『新記』は金子十郎がこの辺りに隠れ住み、誤って馬を渕に乗り入れたのが名の由来だと記す。伝えでは、金子十郎家忠が蕎麦畑と見誤って馬ごと渕に入り溺れ死んだといい、坂戸町戸口の金子一族は今も蕎麦を作らない。渕の上手には十郎が穴居した跡と伝える場所がある。別伝では、入西村に住む十郎が狩の夜に野武士に襲われ、今宿村で川を蕎麦畑と間違えて溺死し、今も時折り馬の鞍が渕に浮かぶという。また入西ヶ原の合戦に敗れて逃げてきて渕に入り、鎧と兜だけが浮いて骸は見つからなかったとも語られる。
原典より
十郎渕については、『新記』巻一九一に「丸渕共云。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。