川越城の七つ釜に身を投げた世禰姫
どんな伝承か
太田道真・道灌の父子が川越城を築いたときの話である。城の南には七つ釜と呼ばれる底知れぬ深みが七か所もあり、泥が深くて土塁がなかなか仕上がらなかった。ある夜、道真の夢枕に竜神が立ち、人身御供を出せば神の力で成就すると告げ、翌朝いちばん早く来た者を差し出せという。道真は毎朝先に来る愛犬のつもりで承知したが、現れたのは娘の世禰姫であった。姫は父と同じ夢を見たといい、城と人のために生贄になりたいと願う。やがて家人の目を盗んで館を出た姫は、七ツ釜のほとりの川へ身を投げ、まもなく城は完成したと伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第5巻』は、叢書「日本伝説大系」の一巻をなす伝説資料集である。埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨の伝説を扱い、二つの太陽、蹴裂明神、ダイダラボッチ、平将門、源頼朝、豪徳寺の招き猫、黒塚、山の背競べ、親捨てなどの話ごとに、口承を重んじて選んだ例話を掲げる。各項は例話に〔類話〕〔文献〕〔参考〕を添え、類話は伝承地ごとに梗概で示し、文献は近世以後の史料を原文で抄出し、柳田・高木の分類による話型名を併記する。