鈴が鳴るまで封じられた喜多院の大蛇
どんな伝承か
喜多院の和尚のもとへ、二匹の大蛇が美しい女に化けて夜ごと訪ねてきた。昇天を願ってのことだったという。そのころ仙波のあたりでは大蛇に田畑を荒らされて人々が困っていた。和尚は里人を憐れみ、鈴が鳴るまで出てはならぬと言い渡して、大蛇を大師堂の下に封じ込めた。本堂の下の穴がその跡と伝えられ、以来山内では鈴を振ることを禁じるようになった。別の伝えでは、蛇好きの和尚が鈴を鳴らして餌を与えていたが、後の住職が餌をやらず蛇は次々に餓死し、生き残った一匹が大蛇となった。ある朝、納豆売りの鈴の音に出てきた大蛇は何ももらえずに怒り狂い、人畜に害を与えたため、鈴が禁じられたという。
原典より
喜多院の和尚のところに二疋の大蛇が、美しい女の姿になって夜な夜な訪れて来た。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。