清水橋の河童がくれた十枚の皿
どんな伝承か
熊谷市戸出と平方の境にかかる清水橋にまつわる話である。ある夕方、野良仕事を終えた百姓が橋の下で馬を洗って帰ると、馬の尾に河童がぶら下がっていた。百姓は哀れに思って酒を飲ませ、裏の川へ逃がしてやった。翌日の夕方、同じ場所に見慣れない皿十枚と礼状が置かれていて、河童からの返礼だと分かった。以後、祭や祝いで物が足りないときは、川棚に手紙を流しておけば翌朝には望みの品が揃い、箪笥まで借りられたという。ところが皿を一枚割ってしまい、詫び状を出しても届かず、貸し借りは途絶えた。皿は昭和二十年の空襲で失われたが、唐渡りの品だったと語られている。
原典より
野良仕事を終えた百姓が、戸出と平方境にある清水橋の下で馬を洗って帰ると、馬の尾に何だか変なものがついていた。—— 埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
埼玉県伝説集成——分類と解説 上(韮塚一三郎・埼玉県伝説集成)
『埼玉県伝説集成――分類と解説 上』は、韮塚一三郎が埼玉県内の伝説を類型ごとに集めて編んだ伝説集の上巻である。片目の魚、化かす狐や狸、松・杉などの樹木、石や岩、ダイダラ坊と山、清水・渕・池・井戸にまつわる県内各地の伝説を、郷土誌や地誌、『埼玉史談』などの文献と、地元の資料提供者や話者の報告から採って収める。各話に所在地と出典を添え、話型ごとに〈解説〉を置いて全国の類例と信仰の背景を論じ、[参考]文献を挙げる。