戸畑に下らなかった年の悪疫
どんな伝承か
戸畑の山笠祭りに、天籟寺の山笠は客分として加わった。戸畑側は酒一升を提げて途中まで迎えに出るのが習いで、迎えられる天籟寺の側にも相応の身構えがあった。道が曲がりくねっているため棒鼻を担ぐ者の足がどうしても左右の田畑に入り、よその領分を踏み荒らしたと笑われるのが悔しくて、舁き棒を前後とも一尺ずつ詰めたという。帰りには戸畑の領内を早く抜けようと威勢のよい掛け声もかけた。あるとき事情があって天籟寺の山が下らなかった年に戸畑で悪疫がはやり、山が来なかったせいだとされて、以後この山にはあちこちから酒や金一封の祝儀が寄せられるようになったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
北九州市史 民俗(北九州市・北九州市史)
『北九州市史 民俗』は、北九州市が編んだ市史の民俗編である。ここに収めるのはその第三編「信仰伝承」第一章「信仰」の第二節以降で、門司・小倉・若松・八幡・戸畑の各区に伝わる聖地と忌地、神仏信仰、神事と法会、巡礼、巫者・祈禱師、信仰集団、狐憑きや犬神などの憑霊・霊異現象を記す。節ごとに地区と地名を挙げて事例を並べる編み方で、祟る石や産女石、落人の墓なども忌地の項に見える。