田野浦の聖山と遊女の墓
どんな伝承か
門司区田野浦の聖山(日尻山)一帯、とりわけ真楽寺の裏手には旧家の墓が集まっている。かつては、明治五年(一八七二)の人身売買禁止令で営業できなくなった田野浦の茶屋遊女たちの墓も数多く並んでいたが、昭和五十三年(一九七八)ごろに同区庄司町の地蔵寺へ移された。こうした墓地を土地の人々は忌み嫌う場所ではなく、むしろ聖地のような感覚で受け止めている。市史の編者は、神の山として女性の立ち入りを固く禁じた若松区小竹の小嶽山(白山神社の鎮座地)と同じ意味合いではないかと推している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
北九州市史 民俗(北九州市・北九州市史)
『北九州市史 民俗』は、北九州市が編んだ市史の民俗編である。ここに収めるのはその第三編「信仰伝承」第一章「信仰」の第二節以降で、門司・小倉・若松・八幡・戸畑の各区に伝わる聖地と忌地、神仏信仰、神事と法会、巡礼、巫者・祈禱師、信仰集団、狐憑きや犬神などの憑霊・霊異現象を記す。節ごとに地区と地名を挙げて事例を並べる編み方で、祟る石や産女石、落人の墓なども忌地の項に見える。