花見潟に立つ河原の地蔵さん
どんな伝承か
琴浦町赤碕の海辺には、数えきれぬほどの墓石が浜に沿って立ち並ぶ場所がある。地区の名をとって花見潟墓地と呼ばれてきた。その一隅、赤碕塔の近くには、高さ三・四メートルもある石の地蔵尊が立ち、土地では河原の地蔵さんと呼ばれている。宝暦十二年の建立で、人夫五百人、賃銀三十貫、日数五百日を費やしたと記録に残る。これほどの石造物が営まれたのは、この浜がもともと何らかの聖地であり、鎌倉末期の石造文化が絶えずに続いていたからだろうと著者は見る。折から広まった墓石を立てる習俗が、ここを目を見張るほどの大墓地にしたのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。