西叡山に棲む三人の魔姫
どんな伝承か
昔、豊後の西叡山には人を捕らえて食う三人の魔性の女が棲み、麓では西叡山の魔姫と恐れられていた。村中が休む盆の十六日にも、怠け者の樵夫木太は山で薪を取り、中腹の円福寺御堂で寝入ってしまった。日暮れに目覚めると三人の魔姫が現れ、口から吹き出した蜘蛛の糸のような白い糸で木太を縛り、堂の隅の古井戸へ引きずり込んだ。魔姫たちが用を足す川原部落の入口は姫糞と呼ばれていた。通りかかった甚助は岩穴に隠れて、木太をいつ食うかと相談する声を聞き、里へ駆け下りて知らせたが、話し終えると倒れて死んだ。影を呑まれていたのである。翌日、山には糞が三つ積もっており、以後この地方では盆の十六日の夜更けに出歩かないという。
原典より
翌日、里人たちが山に行つて見ますと、甚助の言つたとおり、姫の糞が三つ山のように堆くなっていました。—— 大分県の民話 第1集(土屋北彦・大分県の民話シリーズ) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
大分県の民話 第1集(土屋北彦・大分県の民話シリーズ)
『大分県の民話 第1集』は、大分県に伝わる伝説と昔話四十四話を収めた民話集である。杵築・国東・玖珠・久住・日田・大分などの土地にまつわる城主の姫の悲話、地蔵や御名号の霊験、大蛇やカッパのたたり、馬鬼退治、大友・島津の合戦の話に、亀の報恩、瓜姫、山うば、猿と蟹などの昔話を交え、方言の語りのままの話も含む。最後に、八百屋お七の恋人吉三郎が杵築の旅籠の主の勧めで八坂村白水に正寛寺を建てた由来を置く。