後蘭村・世の主の墓と洗骨
どんな伝承か
沖の永良部の後蘭村では、沖縄世の主の墓というのが御嶽になっていて、今も年ごとに遺骨を洗う祭りがあるという。近世の琉球語では世の主はすなわち国王であるが、骨を留めるほどの新しい世代に、海の北へ流寓して果てられた王はいないはずである。はたして今から五六百年前の昔、中山の王統が何度か覆り、今帰仁山北の遺民が四方に散乱した頃、北へ遁れた者があったのか。あるいは島人の間に伝えるように、沖縄の世の主の身内である人のことであったのか。伝説はすでに変化してしまって推測を許さないが、南の島々にはこうした悲しい王の群が随分多く漂着しているのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第1巻』は、柳田国男の著作を集めた著作集の一巻である。椰子の実の漂着から日本人の渡来と稲作を海の道に求める論考と、海神宮考・みろくの船・根の國の話・寶貝のこと・稻の産屋などの諸篇、大正期の南島旅行に基づく『海南小記』、昭和二十六年八月の自序をもつ『島の人生』を収める。いずれも海と島を舞台に、ニライカナイや宝貝、漂着や島の復興をめぐる民俗と歴史を論じている。