宇久須沖の漁船が船へ送る信号
どんな伝承か
五月二十二日、朝六時に沼津へ還るという松丸に乗った。宇久須のあたりで、海上の漁船から小旗または笠などを高く掲げて信号する。今捕れた魚を、すぐにこの沼津行きの船に運ばせようとするのである。魚はサンマ、またサメなどもある。片はしにいる船員がニダシ(煮出し)を貰え貰えとわめくと、漁夫たちは小魚二、三尾をくれて機嫌を取るのである。こうした出来事がこの航海中に二、三度あった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第3巻』は、柳田国男の紀行・日記・随筆を集めた著作集の一巻である。相模・武蔵の村々を歩いた「水曜手帖」、昭和二十三年八月の自序を持つ「北国紀行」、明治四十三年の「五十年前の伊豆日記」、国際聯盟の委任統治委員会に勤めた大正十一年の「瑞西日記」と「ジュネーブの思ひ出 その他」を収める。後半の「菅江真澄」は昭和十七年二月の序を付け、真澄の著述と旅の跡を年を追ってたどり、写真解説を添える。