唐臼に隠し飼われた赤い小犬
どんな伝承か
一九二三年に編まれた『三好郡志』で、編者の田所市太は子どものころに聞いた話を思い出して書き残している。犬神の正体は小犬で、犬神持の家では唐臼の中に数匹の小犬を隠して飼い、ときどき食べ物を運んで与えていたという。毛の色は赤だったように思う、と田所は記している。同じ『三好郡志』には第三高等学校の荒木蒼太郎教授も、犬神は小犬で、大きさは家兎ほどにもならないと書いている。
原典より
一九二三(大正十二)年編纂の『三好郡志』には編者の田所市太氏が子供時代の伝聞を思い出して、犬神の正体は小犬で、犬神持の家では唐臼の中に数匹の小犬がかくし飼われていて、時々食べ物を運びあたえていた。—— 徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究)
『徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)』は、徳島をめぐる研究叢書『徳島の研究』の方言・民俗篇の巻で、阿波の犬神を論じた一篇を収める。狸やトウビョウと並ぶ阿波の憑きものとしての犬神について、起源の伝説、正体とされる小犬や鼠、犬神筋の分布と女系の継承、憑依の動機と症状、祈祷による犬神落しを、筆者の聞き書きと室町期の下知状、郡誌や『阿波民俗』などから述べる。七節に分け、昭和期の犬神をめぐる事件と迷信打破の道で結び、末尾に参考文献の註を掲げる。