台風のあと山村に広がった犬神落とし
どんな伝承か
祈祷師の山下法剣から聞いた話である。一九七五年八月に台風六号が通り過ぎたあと、麻植郡のある山村でさまざまな病気がはやった。医者に診せても思うように治らなかったため、多くの人が祈祷所を訪れて犬神落としの祈祷を受けたという。狸やトンベガミが人に憑くという話はこのころ県内でほとんど聞かれなくなっていたが、犬神だけは今も各地の祈祷所を頼る人が絶えないと山下は語っている。
原典より
氏の話では一九七五(昭和五○)年八月の台風六号の後に麻植郡のある山村で種々の病気が流行し、医師の手当をうけたが、回復がはかばかしくないので祈祷所を訪ねて犬神落しの祈祷をうけたものが多かったという。—— 徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究)
『徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)』は、徳島をめぐる研究叢書『徳島の研究』の方言・民俗篇の巻で、阿波の犬神を論じた一篇を収める。狸やトウビョウと並ぶ阿波の憑きものとしての犬神について、起源の伝説、正体とされる小犬や鼠、犬神筋の分布と女系の継承、憑依の動機と症状、祈祷による犬神落しを、筆者の聞き書きと室町期の下知状、郡誌や『阿波民俗』などから述べる。七節に分け、昭和期の犬神をめぐる事件と迷信打破の道で結び、末尾に参考文献の註を掲げる。