三好郡池田町上野の土地返済による犬神憑依事例
どんな伝承か
犬神持が残念がらされた場合にも取憑くことが多いという。三好郡池田町上野の某犬神持の家では、貸金の抵当に土地をとり、その土地に家を建てて娘に別家させたいと思っていた。ところが返済期限が来て貸金が返済され、抵当に入っていた地所が取り戻されたので、当てがはずれた犬神持は非常に残念に思った。そこで相手の家の子供に二、三度取憑いたが、今度は三五歳の母親に取憑いたことを、祈祷の時に口走ったそうである。犬神持が遺恨に思った時には、なおさら取憑くことが多いと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)(徳島の研究)
『徳島の研究 第6巻 (方言・民俗篇)』は、徳島をめぐる研究叢書『徳島の研究』の方言・民俗篇の巻で、阿波の犬神を論じた一篇を収める。狸やトウビョウと並ぶ阿波の憑きものとしての犬神について、起源の伝説、正体とされる小犬や鼠、犬神筋の分布と女系の継承、憑依の動機と症状、祈祷による犬神落しを、筆者の聞き書きと室町期の下知状、郡誌や『阿波民俗』などから述べる。七節に分け、昭和期の犬神をめぐる事件と迷信打破の道で結び、末尾に参考文献の註を掲げる。