犬神の本場で減っていく犬神つき
どんな伝承か
阿波の池田町は四国の犬神の本場といわれ、著者は二度この町を訪れて犬神の実情を詳しく聞いた。昔は毎年多くの犬神つきが出たが、近年はしだいに減り、とくに小学校を卒業した者に憑いたという話は聞かないという。阿波から寄せられた報告によれば、犬神は家に代々伝わるものとされて交際から退けられ、縁組の妨げにもなった。報告者は犬神を一種の精神病と見ており、狂態を演じるのはたいてい女子で男子はまれ、また食物にまつわることが多く、裕福な家や士族の家に犬神がいた話は聞かないと記している。
原典より
昔は毎年犬神つきが沢山生じたが、近年は次第に減じ、殊に小学校卒業者についた話を聞かぬと申している。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。