乱心者は夜になると正気に返り仕事も会話もできるが
どんな伝承か
岩原村の乱心者は、夜になると正気に返って仕事も会話もできたが、翌朝農事に出て四ツ時(午前十時)頃になると、誰からともなく農具を放り出して道端に集まり、惣老や五人組頭の家へ押しかけ、歌い舞い、源平の昔物語などを語りだした。犬神が大勢押しかけて来たと叫び、日ごとに新顔が加わって人数は増えた。栗生村の定福寺の真言僧が阿弥陀堂で日夜祈祷したが効験はなく、祈祷の最中はいっそう狂い暴れた。人数は四十余人にのぼり、土佐藩は差配役を派遣したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年))
『二つの怪奇な心霊現象』は、浅野和三郎が著し、心霊科学研究会が昭和十五年に発行した心霊現象の記録で、昭和二十七年に再版された。前篇は土佐国長岡郡豊永郷岩原村で村人数十人が憑きものに狂乱し、藩の役人が祈禱や鉄砲で鎮めた事件を、嘉永六年に野島通玄が記した記録から紹介する。後篇は山梨県北巨摩郡穂坂村の旧家の娘かね代に先祖横森市兵衛の霊が懸かり、盗まれた不動明王の掛軸が戻った因縁を、著者の調査と甲州訪問記を添えて述べる。