乱心者が嫌う犬と鉄砲を隠して接近し
どんな伝承か
大庄屋の進言に従い、鎮圧隊は犬と鉄砲を隠して阿弥陀堂へ近づき、隊を二手に分けて南北から険路を潜行した。近づくと狂乱者たちは気づき、『汝ら何者ぞ』と物凄い形相で反抗した。惣宰の号令とともに、剛気の与力を先頭に杖や十手で打ちかかり、空鉄砲を放ち、曳いてきた犬を吠えさせて跳びかからせた。弱い者は難なく搦め捕られたが、剛勇の者は砲火の中から立ち上がり、再三打ち伏せ蹴倒しても狂怒して罵り、激しい乱闘となったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年))
『二つの怪奇な心霊現象』は、浅野和三郎が著し、心霊科学研究会が昭和十五年に発行した心霊現象の記録で、昭和二十七年に再版された。前篇は土佐国長岡郡豊永郷岩原村で村人数十人が憑きものに狂乱し、藩の役人が祈禱や鉄砲で鎮めた事件を、嘉永六年に野島通玄が記した記録から紹介する。後篇は山梨県北巨摩郡穂坂村の旧家の娘かね代に先祖横森市兵衛の霊が懸かり、盗まれた不動明王の掛軸が戻った因縁を、著者の調査と甲州訪問記を添えて述べる。