泥にまみれて田の草を取った地蔵
どんな伝承か
富津市吾妻にある田の草地蔵は、田の草取りの季節を迎える今も、農家の人々の信仰を集めている。いつのころか、田植えを終えた里に悪い病がはやり、誰も田の草取りができなくなった。重い年貢のことを思って皆が苦しんでいると、笠も衣も汚れた坊さんが里へやって来て、心配することはない、田の草は吾妻の宮の一族と自分たちで取ってやろうと言い残して去っていった。翌日、里人が田を見回ると、草は一本も残っていなかった。地蔵を拝むと、その両手両足が泥だらけになっていたので、あの坊さんは地蔵さまだったと気づき、それ以来信仰が絶えないという。
原典より
田の草とりの季節だが、富津市吾妻にある田の草地蔵は、いまも農家の信仰を集めている。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。