入江に身を投げた真間の手古奈
どんな伝承か
市川市真間の手古奈堂は、万葉集に収められた高橋連虫麻呂の長歌以来語り継がれてきた手古奈の物語に拠っている。むかし真間の里に、身分は低いながら貴人の娘よりも美しく清らかな乙女が、素朴に暮らしていた。その微笑に心を奪われた里の男たちは競って結婚を申しこんだが、乙女はどの男の心にも従おうとせず、ついに人の世をはかなんで入江へ身を投げてしまったという。妻を争う説話のひとつである。緑に囲まれたいまの堂は安産の神として信仰され、四月と十月の八日九日の例祭でにぎわう。
原典より
市川市真間の手古奈堂は、『万葉集』に残っている高橋連虫麻呂の長歌以来の手古奈の伝承を基盤にしている。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。