倉庫に築かれた蟻の塔
どんな伝承か
上総七不思議の一つに数えられた喜多村甚左衛門の蟻の塔は、天保末期を限りとして、弘化年間の頃からは小穴に虫の来る跡になってしまった。もとはそれほど古い時ではなく、東金の喜多村甚左衛門が所有する倉庫の中から見つかったもので、広さ五尺余、周囲は一丈五六尺、三丈余ともいう。倉庫の隅の地上から蟻が土を運んで盛り上げ、ついにこの巨大な塔をなしたのだという。蟻の巣の中に仏の形を抱くという奇観をもって、世に名高い眺めとされた。
原典より
上総七不思議の一つに数へられてゐた喜多村甚左衛門の蟻の塔も、天保末期を限りとして、いつか(弘化年間頃より)小穴にくる虫の跡となってしまった。—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。