狐の糸をたどって築いた小糸の館
どんな伝承か
小糸館の館主であった秋元氏の遠祖は、諏訪明神の信奉者であった。ある日、信濃の諏訪明神から一本の糸を掛けたところ、その糸が引かれてどこまでも続いて行くのを見た。殿はその糸をたどり、狐の引く糸を追って行ったが、あるところで糸は絶えていた。殿は命じてそこに陣屋を構えられ、狐糸の跡といって、糸を小糸と称した。秋元氏は初め安房の里見家に仕え、後に小田原の北条氏、北条氏の後は徳川氏に従って六万石を領するに至った。いつの頃からか狐糸の名は廃れ、小糸と書き替えられて今に至ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。