建暦寺に伝わる貞元親王の遺品
どんな伝承か
旧貞元村の釜神に建暦寺という真言宗の寺があり、貞元親王ゆかりの品を寺宝として蔵している。親王の御影一躯、親王が用いたという革の履、自筆と伝える色紙、そして恵心僧都が親王の菩提を弔う際に一日に数千を刻んだと伝えられる二十五菩薩の面である。寺の縁起によれば、寺は行基の開基で、天延二年に貞元親王が上総の江尻島へ流された折、供奉の武士らが江尻に宮殿を構え、その地が貞元村と呼ばれるようになったという。しかし著者は「三代実録」の記事から年代が合わないとして縁起を疑っている。ほかに供奉の者が帯びたと思われる太刀なども伝え、親王の遺愛の品であろうと言われている。
原典より
旧の貞元村に安置してゐる釜神(釜神大明神)に、建暦寺(一名一ノ宮)といふ真言派の寺院があるが、此の寺に、貞元親王の御影(正観世音菩薩は本尊像)一躯、親王の召し給ふたといふ革の履(一足)一、御筆(さとをたむといふ)自書(「…—— 日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 上総の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・1917年(大正6年))
『日本伝説叢書 上総の巻』は、藤沢衛彦が大正六年に編んだ上総国の伝説集である。夷隅・長生・山武・市原・君津の五郡にわたり、地名の由来、社寺の縁起、城と武将の事跡、大蛇や狐つきの怪異、俚謡や民間の風俗を、口碑や『総国誌』などの地誌から集める。巻頭に著者の序と緒言を置き、上総国と郡の名義を説いたのち、郡ごとに町村の所在を添えた見出しで一話ずつ並べる。