一夜で立ち直った観音寺の起松
どんな伝承か
芝山町芝山の観音寺の境内に立つ松の話である。寺は昔の兵火で焼けており、文化二年の春、その跡地に三重塔を建てようとしたところ、斜めに傾いた松が邪魔になった。伐り倒すことに決めた翌朝、松は一夜のうちに真っ直ぐ立ち直り、枝はことごとく北を向いていたという。本尊の仁王の力によるものとされ、垣を巡らせ注連縄を張って起松と呼ぶようになった。
原典より
周圍九尺、高さ約五丈、本山が昔兵火にかかり、文化二年の春、その舊蹟に三重塔を建てんとして地を選ぶに、一松が斜に傾むいて妨げとなるので、これを伐らうとすると、一夜の中に樹形直立して枝はみな北に向つた。—— 日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説名彙(柳田国男(指導)・日本放送協会(編)/関敬吾・石原美子(編纂)・1949年(昭和24年))
『日本伝説名彙』は、柳田國男の指導のもとに日本放送協会が昭和二十四年に編んだ伝説の名彙である。全国の伝説を、その拠り所となる木・石・岩・橋・清水・淵・塚・坂・屋敷・地蔵などの地物の名ごとに集め、伝わる県郡村名を付して、郡誌・市町村誌や伝説集、民間伝承誌などの出典を括弧で示す。冒頭に柳田の「傳説のこと」を置き、木・石岩・水・塚・坂峠・祠堂の部に分けて、巻末に資料の解説と種類別索引を付す。