蚊帳の吊り方を知らぬ川津場の人
どんな伝承か
山武郡芝山町の川津場の人々を主人公にした昔話が周りの土地に伝わっていて、民俗研究家の押尾孝氏が集めている。安房の増間の話と同じく、ほとんどが愚か者の笑い話である。その一つが蚊帳の失敗談だ。昔、川津場には蚊帳というものがなかった。ある夏、旅に出た村人が蚊帳のある宿に泊まり、こんな便利な物があったのかと驚いて、うるさい蚊を防ぐために一張り買って帰った。ところが肝心の吊り方を聞き忘れていたので、仕方なく裾を上にして吊ったものの、今度は入り方がわからない。そこで壁にはしごを掛け、上から飛び込んだという。
原典より
北総の山武郡芝山町川津場の人たちを主人公にした、昔話が周辺各地に伝承されており、民俗研究家の押尾孝氏が採集しているが、いわゆる安房増間と同じように馬鹿話がほとんどである。—— 房総の年輪 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の年輪
『房総の年輪』は、房総各地の伝説・昔話・信仰の伝承地を一項ずつ取り上げた短い文章を集めたもので、著者と刊行の事情は原典に記されていない。香取の要石や真間の手古奈堂、松虫姫、源頼朝や義経の伝説地、沈鐘伝説、椀貸伝説、河童や天狗、海の怪異「もうれん」などを、『譚海』『上総国誌稿』や市町村の民話集を引きながら所在地とともに記す。各項は読み切りの小文で、昭和四十五年と四十七年の年頭に書かれた項を含む。