亀の甲山の頂から響いた天狗の高笑い
どんな伝承か
天竜川の東岸、遠江の水窪町池ノ平での話。五十歳ほどの女が、昭和二年の正月の末、雪が二尺ほど積もった朝に、水を汲もうと桶を提げて家の裏口へ出た。すると目の前にそびえる亀の甲山の頂から、とてつもなく大きな声でアハハハとひと声だけ高笑いする者があった。辺りがようやく白み始めた頃で、人の声とは思えず、きっと天狗だろうと後で噂し合った。それから三、四日たつと、その家の主人が急に亡くなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。