半月ぶりに戻った天狗隠しの若者
どんな伝承か
明治のころの話。日和田山の隣にある富士山で知られた小瀬名部落の若者が、ある日ふっつり姿を消した。天狗隠しにあったのだと、部落の者が総出で鐘や太鼓を打ち鳴らし、あたりの山野をくまなく捜したが見つからない。ところが半月ほどたって、若者はぼろぼろの着物のまま、気の抜けた顔でひょっこり帰ってきた。どうしていたのかと尋ねると、夜は天狗に連れられて山中を歩き回り、昼は木の上で寝ていた、食べ物は天狗がどこからか草や木の実を運んできてくれたと答えたという。子ノ山で茶店を開いていた女も水汲みに出て天狗隠しにあい、気がふれてしまったと伝えられる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。