加茂谷橋で闇に包まれた大工見習い
どんな伝承か
昭和二十二年六月下旬、旧三庄村中の庄の城谷生まれで大工見習いをしていた下泉英男の体験。加茂の古川に住む友人の家で夕飯と酒をふるまわれ、九時半ごろ自転車で帰途についた。年寄りたちから加茂谷橋には人を化かす狸がいると聞いていたので、橋の手前で降りて押して渡ろうとすると、橋の上は真っ暗で一寸先も見えず、振り返っても闇だった。座り込んで煙草を吸い、まつげに唾をつけて十二、三分待つと前がうっすら明るくなり、渡って帰り着いた。翌日話すと、友人の父は慌てず座って煙草を吸ったのがよかった、化かされる寸前だったと言ったという。
原典より
手平の短歌の先生とこへ行ったとき遅なってしもうてのう、先生に送ってもろうたんやが、あっこらさぶしいとこでのう、ドブのはたにお地蔵さんがあったんえ、そのお地蔵さんの一寸向うにうどんて書いた赤いちょうちんがつっちゃあって、そ…—— 現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。