京石のそばで洗濯する裸の娘
どんな伝承か
吉野川の渡し場に近い昼間の船着場には、京石と呼ばれる長い青石が水際に突き出ている。万延元年六月の猛暑の日、土居の百姓利吉の娘お京が洗濯に来て、人目がないのを幸いに川へ飛び込んだ。対岸から来た渡し舟の若者たちが肌の白さをはやし立てると、お京は水にもぐったまま浮かんでこず、青石の近くの水底で亡骸となって見つかった。十七歳だった。以来その石は京石と呼ばれ、闇夜に裸の娘が石のそばで洗濯していたという話が伝わる。
原典より
それからのち、渡船場の青石を「京石」となえるようになったが、夏の月夜に若い娘がこの付近で泳ぐのを見たといったり、…—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。