桜間池を汚した家に笑う姫
どんな伝承か
高川原の桜間神社の池には大蛇がすみ、汚すと祟ると恐れられていた。明治の終わりごろ、久米川某が家人の制止も聞かず池に下肥を流すと、その夕方、姫のような美しい娘が家を訪れて二階へ上がった。家の者が声をかけると娘は耳まで裂けた口で笑い、以後毎晩二階から高笑いが聞こえて藍の取り入れもできなくなった。剣客の宮田某が斬りつけてもかわされ、修験者の祈祷もあざけられた。二年半ほどで久米川の家は絶えたといい、それは大正の初めのことだったという。
原典より
その日の夕まぐれ、絵にあるお姫様のような美しい姿をした娘が、姉さんかぶりに顔をかくして、すうっと久米川の家を訪れたかと見ると、そのまま二階へ上って行った。—— 阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の怪談(横山春陽・郷土怪談・民俗・1958年(昭和33年))
『阿波の怪談』は、横山春陽が昭和三十三年に編み、徳島新聞出版部から発行した郷土の怪談集である。徳島県の各地と土佐との国境の山中に伝わる山女郎、淵や池の主、カッパ、亡霊、火の玉、タヌキやキツネ、大ジャの話を、平安朝の言い伝えから藩政期、明治・大正、昭和の出来事まで、編者が古老に聞き、書物から拾って題ごとに並べる。おわりにでカッパやヘビの話の多い地域や海の話の少なさについて記す。