山で木を伐る音を出した狸
どんな伝承か
吉谷地というずっと奥に住んでいた老婆が、家があまり不自由なので鶴ヶ池のそばに新しく家を建てて移ってきた。その連れ合いは樵のような仕事をしており、山へ行って握り飯を食べていると、雷とも山崩れともつかない大きな音がした。地震か風かと空を見上げても空は青く、木も揺れていなければ倒れてもこない。狸がまた自分を馬鹿にしに来たのだと思って覗いてみると、狸が風のようにそのあたりを走り回っていた。やがて鉈で木を伐るようなパーンパーンという音がし、見ると狸が山の斜面に座って首を動かしており、首を振れば木を伐る音、転げ回れば山が鳴るような音や風が起こったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。