鳥屋の小屋に夜ごと響く木を伐る音
どんな伝承か
岐阜県恵那郡福岡町の鎌田惺和の報告。昭和一〇年頃、父は毎年秋になるとカスミ網を張って、ツグミ、アトリ、シメなどの渡り鳥を捕ることを、趣味を兼ねた仕事にしていた。鳥を捕る小屋は家から一〇キロメートルも離れた山の中に建て、もちろん泊まり込みである。一人で泊まっていると、毎晩夜半になると決まって木を切る音が聞こえてくる。こんな夜更けにと小屋の外に出てみると、音はぴたりと止む。布団に入って寝ようとすると、また木を切る音がする。或る日、山に登ってきた友だちにその話をすると、「そりゃあ狸が来たとこだ」と言われた。鳥屋を建てるとき木を切り整地をするので、その抗議に狸が来たのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。