渡り鳥が集う佐多の御崎山
どんな伝承か
海辺の旅が寂しくなった原因のひとつは鳥の衰えだと著者はいう。東海道の山々では汽車の響きや煙が小鳥をおびやかし、捕獲も年ごとに増えている。そのなかで大隅佐多の御崎山は木が深く茂り、木の実が珠を連ねたように実っていて、南から戻ってくる鳥の群れはことごとくこの山に集まって長くとどまる。冬のあいだ毎日が大舞楽の場のようなにぎわいになっていることを、著者はかつて驚き喜び、人に語ろうとしたことがあったという。
原典より
大隅佐多の御崎山が、樹深くして木の實は珠を綴り、南から還るほどの鳥の群は、悉く此山に遊んで久しく留り、三冬連日の大舞樂場を現出して居ることは、會て自分の驚喜して人に語らんとした所であつた。—— 定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。