炉端の餅で縁を占う餅焼きの戯れ
どんな伝承か
柳田村で迎えた正月の夜には、例の十二か月の年占が行われた。餅焼きというのももとは年占であったろうが、この頃にはすでに縁結びの戯れに応用されている。餅を小さく切って男と女を定め、それを炉の片脇に並べて置くと、焼けてふくれていつとなく近づいてゆく。それを見て、それ男が寄って来たとか、これは女の方から手を出したとか言って、娘たちが笑いどよめいたと書いてある。焼餅を焼くという語が嫉妬を意味するのも、多分は昔行われたこの遊戯が元であろうという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。