人魚を食って死ねなくなった男
どんな伝承か
万治二年、いまから三百十余年前のことである。雄勝郡湯沢町の酒造りの家に、海から珍らしい獲物があったと、知り合いの漁師から届けものがあった。若い女の顔で、からだは魚であった。これは人魚だと見立てた人がいた。二、三日は息をしていたが死んでしまい、死骸を棄てるのは惜しいというので、この家の主人が一人で食った。それ以来、この男は死ぬこともなく数百年も生きていた。生きているつらさを感じていく度も自殺したが、その度に生きかえった。ある日彼は、羽州の湯殿山に詣でるといって出ていったが、そのあとのことは誰にもわからないそうだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・昭和49年(1974年)頃)
東北怪談の旅(山田野理夫)/飢饉の非業の死と怨念/巫女(イタコ)の口寄せ/座敷童子・河童の怪/東北各地の幽霊伝承