雪を掻きのけて供える彼岸の墓参
どんな伝承か
越後の南魚沼の町方では、こんな話が語り伝えられている。春の彼岸に墓参りに行っても、なお雪が深く残っているため、心当たりの場所の雪を掻きのけて僅かな窪みをつくり、そこに香花を供えて帰るのだという。あの世に往って住む者にとっても淋しいことだろうが、この世に残された親類や友人の間でも、雪に閉ざされる冬の間は行き来がまれになり、春が半ばを過ぎるまで訪ね合うことが難しかったのだと語られている。
原典より
春の彼岸の墓參りなどにも、心當りの雪を掻きのけて、僅かな窪みを作って香花を供へて還るといふ話が、越後南魚沼の町方でも語られて居る。—— 定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。