巻機山の女に負われた弥右衛門
どんな伝承か
木六村の村長だった弥右衛門は、狩に出て奥へ奥へと分け入るうち道を見失った。日が暮れて途方に暮れていると、遠くに灯が見える。近づくと粗末な一軒家で、機を巻く音がし、中には美しい女がいた。一夜の宿を頼むと、ここは世の人の来る所ではない、村まで背負って行くから目を閉じていてほしいという。言われるまま目を閉じて背に負われると、女は飛ぶように駆け出した。いまどのあたりかと気になった弥右衛門が禁を破って左の目をそっと開けたとたん、その目はつぶれてしまう。家に着くと女は消えていた。上越国境の巻機山の名は、この女が機を巻いていたことに由来すると伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。