佐渡海府の滝と鳥の極楽
どんな伝承か
佐渡の島の西岸を南へ進んで来ると、少しずつ水際に平地が出来て、五戸三戸の近世の移住者が絶壁を背にして家を構えている。海の生産は一年の活計に足らぬので、いずれも崖路を登って高地の田を作る。佐渡での特色は屏風のような山の端に喬木が深く茂っていることで、山の田に灌漑した水の末が濁った滝となってこの間から海に落ち、無数の鳥類が傍に憩い遊んでいる。波濤の音に競って声は高く、全く人間の危害から遠ざかっているので動作が至って自在である。北の大陸から毎年渡って来る者がこの島を中宿とするのは蒼古以来の習わしであろう。こうした地形を鳥の極楽と名づけている。
原典より
山の田に灌漑した水の末が濁った瀧となつて此間から海に落ち、無數の鳥類が傍に憩ひ遊んで居る。—— 定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第2巻』は、柳田国男の紀行と旅の随筆を収めた著作集の一巻である。昭和三年一月の自序に続く「雪国の春」や菅江真澄の日記を読み解く文をはじめ、東北の村々の正月、火と炭、浜の暮らしの見聞、「秋風帖」「東国古道記」、昭和十五年十一月の自序を持つ「豆の葉と太陽」などの紀行を並べる。峠や古道、佐渡・五箇山・熊野などの土地を、住む人の暮らしと信仰から見ようとする文が多い。